◆平安の香り

私の家ではときどき火鉢で暖をとります。友達などには驚かれるのですが、暖
かくなるだけでなくてその他の愉しみもあるのです。そのひとつが練香です。

練香は火を直接香につけるのではなく、間接的に熱を加えることで香りが広がっていきます。

古くは平安時代の貴族たちが独自に調合した練香の香りを手紙
や衣にたきしめて、恋のかけ引きのときに使ったものです。火鉢の炭火の近くに練香を置くとゆっくりと香りが広がっていきます。

練香の中でも、なんと生
の梅干を練りこんで手づくりしている、堺の線香工房・薫主堂さんの『梅ヶ香』が最近のお気に入りです。


薫主堂さんでは、南部の梅干屋さんから傷があり売り物にならない南高梅の梅干を分けてもらってつくっているそうです。

梅干の果肉を裏ごしし、梅酢、天然香木粉、たぶ粉、炭粉と練り合わせ、板の上に平たくのばしてからさいの目に切り分けふるいにかけます。円を描くようにふるいを勢いよく回し、遠心力で角を丸く成形、乾燥しないように袋づめし竹筒に納めます


このすべてが手作業なだけに聞いているだけでも重労働なのが分ります。しかも、梅干の塩で手はあれるし、道具はすぐさびるので手入れが大変なんだとか。

ですから、『梅ヶ香』は年末に予約を受けた方だけへの限定製造、限定販売にさせてもらってます、とのこと。


「もし乾いてしまったら、お家にある梅酢を少しかけてあげてください。香りがもどりますよ。」

と薫主堂の奥さんが教えてくれました。

そろそろ暖かくなって火鉢ともおわかれですが、梅ヶ香はアロマポットでも気軽に愉しむことができます。甘酸っぱい梅と天然香木の香りは、平安絵巻にみる雅な時間を運んでくれます。

次回のメルマガでは薫主堂さんの線香作り風景をお届けしますのでお愉しみに。



◆薫主堂:住所 大阪府堺市堺区北半町西2-1
      
電話番号 072-232-2549
       アクセス 阪堺電車「高須神社」、
南海本線「七道駅」 徒歩5分

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