単なる灰汁ぬきですが、和三盆糖の味を左右する重要な工程で、しかも、人手と手間がかかる作業なので、化学薬品やフィルターを使っている製糖所もあるという。 灰汁が抜けた砂糖キビ汁はちょっと飴色になり、美味しさの片鱗を見せはじめますが、砂糖キビに付着していた砂や泥が混入しているので、そのまま放置して不純物が沈殿するのを待ち、上部の澄んだ部分だけが次の炊き上げの工程にまわされます。
「後は、砂糖キビ汁を具合を見ながら煮詰めていくんですが、温度計も糖度計も一切使わないで職人さんの勘だけで仕上がりを判断してきます。 今は、蒸気で炊いていくんで焦がすことはないですが、昔は薪で炊いていたので焦がすこともありましたよ。」
「以前、木釜をステンレスの釜にかえたんですけど、うまく結晶化がすすまず木釜に戻したんですよ。 木釜で熱を少しとったら、今度は素焼きのカメに入れかえ荒熱をとって、さらに結晶化をすすませます。 冷えて固まったのが粗糖です。白下糖(しろげとう)とも呼ばれますが、まあ、白くなる前の砂糖といった意味でしょうか。さあ、次はいよいよ『研ぎ』の工程ですよ。」
さて、岡田さんの後について酒蔵のような大きな蔵の中に入ると、何本もの天秤棒に縄がかけられ、石がぶら下がっています。 「白下糖には結晶化した砂糖と液状の糖蜜が含まれるので、白下糖を麻布に包み、重しをかけて糖蜜を搾りとるんです。このやり方は酒糟搾りのやり方をきっとまねたんでしょうね。」
確かに、昔の酒造りを紹介する資料館のようなところで見たことがある風景ですが、まさか、いまだにこんな伝統的な搾り方が現役だとは驚きです。 「ここからが和三盆独特の精製工程なんですが、荒く蜜を抜かれた白下糖を手水をつけながら練っていくんです。 これが『研ぎ』という工程です。水分が練りこまれた白下糖をまた麻袋に入れ、重しを掛けて糖蜜をどんどん抜いていきます。」
「研ぎの工程で搾りとられる糖蜜も非常においしいんですが、気温が上がるとすぐ発酵してしまうんですよ。 結構人気で以前は販売していたんですが、最近は賞味期限の表示とか厳しいですし、発酵をとめないと瓶が破裂したりするんで、一般への販売はやめたんです。 発酵しても火を入れれば逆に味がまろやかになってさらに美味しくなるんですけどね。防腐剤いれてまで売るのも違う気がしますし。」
和三盆糖がここまで手作業で作られているとは、正直予想もしていなかったと感想を伝えると、先程の研ぎ職人の後継者のことも含め、これからのことは岡田さんもあまり考えられないという。
機会があれば、是非、愚直なまでの職人さんの手仕事と阿波竹糖が醸し出す上品な甘さを体験してみてください。 さて、2011年春、ユノカでは、2010年冬の五島椿油石鹸”蜜椿(みつつばき)に続き、阿波和三盆を製造する過程で搾られる黒糖蜜と生姜でつくった黒糖生姜蜜(ジンジャーシロップ)と沖縄産蓬(よもぎ)を配合した蓬&黒糖生姜蜜石鹸“ヨモギ・ジンジャー”を企画しました。 阿波和三盆黒糖蜜と沖縄産蓬(フーチーバー)の出会いを肌で感じてみてください。 ◆岡田製糖所さんのサイトはこちら。
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